一人会社は必見?取締役を複数化するなら、必ず知っておくべき危険な事項!!

『法人登記Aiしてnet』が経営陣を複数とする場合のデメリットをご案内致します!!

世の中から無くなって欲しいものの一つとして、自分を束縛する「しがらみ」があります。しかし社会に出れば、いつも決まって何がしかの「しがらみ」に出くわすものであります。そんな中、出資も経営も自分一人でやるという「一人会社」(いちにんがいしゃ)は比較的気軽な法人として、多くの方々に受け入れられているように思われます。

 

しかし無い物ねだりがどこにでも現れます。ついさっきまで一人が良いと言っていたかと思えば、やっぱり二人が良いなどと心変わりをしてしまいがちなのもまた人間であります。経営が軌道に乗ると、猫の手も借りたくなるものです。「経営を分担してくれる相棒が欲しい」となってくるものであります。もちろん現時点で法人は一人会社ですから、相棒を会社の経営に参加させるのは赤子の手をひねるが如く簡単、その旨の意思決定を自分一人ですれば済むのであります。

ですが、ここに思わぬ陥穽、危険な落とし穴が待ち構えていることがあるのでご注意頂きたいわけであります。

【危険な落とし穴 第一工程】そもそも定款を良く読まない!

法人は、実体をもたない観念的な存在ですから、必ず代表者を置かなければなりません。そして、その代表者は、取締役や、業務執行社員といった経営陣の中から選ぶことになっています。ただし、経営陣の中から、いかに代表者を選ぶかという選任方法には幾つかの種類があり、そのうちどの選任方法を使うかは定款で定めておくのが一般的です。

 

ところが代表者の選任方法という極めて重要な事項が規定されている定款なのですが、そもそも定款を良く読まない方々が少なくありません。そもそも作成した定款がインターネットから適当なものをダウンロードした代物であったりすると尚更ではありましょうが、そんな軽々しい定款といえども、ひとたび法人の定款として決めた以上、その法人の最高のルールとして守らなければならなくなるのです。

【危険な落とし穴 第二工程】定款のほとんどが取締役が1人か2人かにより代表者の選任方法が違っている!!

先程来、代表者の選任方法が問題となっておりますが、選任とは字義の如く、ある母集団から一定の者を選ぶことであります。そうしますと一人会社の場合は、その母集団がもともと1人なのですから、1人から1人を選ぶことを意味することとなり、ほとんど意味をなさないことが分かります。そのため経営陣が1人の場合の、代表者の選任方法は、積極的な選任ではなく、その1人を当然代表とするという選任方法が取られています。このこともあって経営陣が1人の場合と、複数人の場合とで、代表者の選任方法が異なることがよくあるのです。

 

以下は、良くある定款の抜粋です。

 

(代表取締役及び社長)

第〇条 当会社に取締役を複数置く場合には、 代表取締役1名を置き、取締役の互選により定める。当会社に置く取締役が1名の場合には、当該取締役を代表取締役とする

 2 代表取締役は、社長とし、当会社を代表する。

 3 当会社の業務は、専ら取締役社長が執行する。

 

分かり易く、赤色網掛けと黄色網掛けに分けましたが、赤色網掛けが経営陣複数の場合の代表者の選任方法であり、黄色網掛けが経営陣1名の場合の代表者の選任方法であります。かような定款の下では、強い助っ人を新取締役として就任させただけで、彼との互選により自己を代表者として選定することを忘れていたならば、代表者の選任方法につき定款違反があるということになってしまいます。

もちろん、もともと自己が代表者の場合、その後、新たな就任者との互選により、改めて自己を代表者として選任しても、代表者については登記事項に変更はありませんので、新就任者を取締役として就任させる旨の登記をなすだけで、代表者の選任手続については、実際に適切にそれを実践していたとしても、登記手続上それを裏付ける資料の提出等は不要ですので、実際には定款違反が露呈しにくいケースではありますが、ひとたび訴訟に発展しますと、代表者の選任根拠にも、その選任手続に基づく代表者の登記にも瑕疵があることになってしまいますので、くれぐれもご注意願います。