合同会社の代表社員は、普段人気者なのに、任期がないのはなぜですか?

代表者って任期がないの?『法人登記Aiしてnet』に聞いてみた。

法務省の統計調査によりますと、新たに設立される法人のうち、およそ4分の1にも当たる割合が、合同会社であるとの結果が公表されています。法人の種類は4種類に限られませんから、その4社に1社が合同会社であるというのは、合同会社がいかに多くの方々に利用されているかが窺えます。そして合同会社には必ず代表社員が必要ですから、需要の多い合同会社の代表社員は、いわば買い手市場といえるでしょう。

 

法人の代表者といいますと、重役ですから、その出処進退がいつも注視されます。就任・辞任はもちろんのこと、任期満了もまた、その法人にとって重大事項となります。ところで、さきの合同会社の代表者でありますが、人気者であるだけに、任期も当然あるものかと思いきや、代表者には任期がありません。といいますのも、例えば代表取締役が取締役でもあることのように、代表者という地位は、職務執行者という地位の上に成り立ちます。仮に職務執行者という地位に任期があるのなら、代表者という地位にも任期を定めることは、屋上屋を重ねるが如きものでありますし、逆に職務執行者という地位に任期がないのなら、代表者という地位にのみ任期を定めても、後述の通り、任期の本質に整合しないからであります。

 

以上からしますと、このページで問題とすべきは、合同会社の業務執行社員に任期がないのはなぜかということであり、以下、更に掘り下げてみていきたいと思います。

例えば「国会議員の任期」というように、任期という言葉をお聞きになったことは皆さま一度や二度あるのではないでしょうか。任せる期限と書いて任期と読みますから、任期には、いつまで任せるのかという意味が込められていることになります。任期のある役員として有名なのは取締役です。取締役を社外からスカウトしている場合、それは株主の中に能力のある者がいないことを意味します。そのような会社においては、任期が満了した取締役はいったん退任し、その期の業績の良し悪しによって、次期も続投するか否かが決められるのです。続投できないとなれば、雇われ経営者に過ぎない取締役は、会社を去ることになります。

 

これに対し合同会社の場合、経営者を社外からスカウトすることができません。といいますのも、合同会社に取り組もうとする人は必ず出資等をして持分を取得しなければならないことになっているのです。合同会社で経営に携わる者を「業務執行社員」と呼びますが、その者もまた「社員」でなければならないのです。としますと、たとえ業務執行社員の地位を退いたとしても、どうせ平社員として同じ会社に残留できることになり、これでは進退を賭けて経営に取組むという状況になりません。合同会社の業務執行社員に任期が無いのはこれ故なのです。

 

もちろん任期のない業務執行社員につき定款で任期を定めることは可能です。

とはいえ、それが任期満了により業務執行者の地位を失うだけで、平社員の地位を失わないのでは任期の本質に反します。ですから業務執行社員につき定款で任期を定めるのであれば、その任期満了の暁には、平社員としても合同会社から退社することまで定め切ることが重要であろうと思います。

 

以上のように、任期とは、進退を賭けて経営に邁進する期間という意味であり、経営陣を退任しても会社構成員として残留できてしまう合同会社では、本質的に整合しない概念であると分かったところで、任期の有無につきまとめ表を作っておきましょう。 

 

<任期の有無のまとめ表>

  株式会社 有限会社 合同会社

上層の地位

代表取締役 代表取締役 代表社員

任期なし

∵任期が必要な場合、中層の地位に付せば十分である。

中層の地位

取締役 取締役 業務執行社員

任期あり

∵社外からスカウトされた者として、社内に確立した地位を有していないため、期限を切って進退を賭けて経営に専念させる実効性がある。

所有と経営が分離

任期なし

∵出資をした会社のオーナーとして、社内に確立した地位を有しているため、期限を切って進退を賭けて経営に専念させる実効性がない。

所有と経営が一致

下層の地位 社外の者 株主 社員
任期なし

 

清算決了登記をした後で、抵当権を抹消して欲しいと言われましても・・・???▶

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